フィリップ・グラス続編



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♪音を喜ぶ耳と音楽の構造を知的に楽しむ耳を...♪ミニマル・ミュージック、21世紀の音楽の夢   四人のミニマリスト その2!フィリップ・グラス続編.....♪
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<ラヴィ・シャンカール/ Ravi Shankar>

-東洋と西洋の偉大なる音楽的な出会い。-

ラヴィ・シャンカールとフィリップ・グラス。
かたやインド音楽を代表するシタール奏者/作曲家、かたやスティーヴ・ライヒやテリー・ライリーなどとともにポスト・ミニマル・ミュージックを代表する作曲家。



<フィリップ・グラス Philip Glass>

1月11日の日記
『映像と音楽の黙示録「KOYAANISQATSI (コヤニスカッツィ)」』
の続編となりますので、合わせてご覧ください。




「美女と野獣*シネオペラ」フィリップ・グラス・アンサンブル



<ジャン・コクトー/Jean Cocteau 1889-1963>

コクトーの映画『オルフェ』『美女と野獣』『恐るべき子供たち』をベースにしながら、グラスは舞台作品“コクトー3部作”を発表している。



「ザ・フォトグラファー」

フィリップ・グラスは15歳でシカゴ大学に飛び級入学し数学と哲学を専攻するほどの天才少年。17歳の時にはパリに短期間語学留学をし、ジャン・コクトーの演劇・映画に触れたことから、劇音楽に興味を覚えるようになったという。
1960年、ジュリアード音楽院に入学。1964年にはフルブライト奨学金を得て、再びパリに留学。ゴダールやトリュフォーらヌーヴェルヴァーグの映画体験が後年の映画音楽作曲に大きな影響を与えることとなった。



高名なナディア・ブーランジェ女史(当時すでに79歳)に3年間師事。この頃までに書きためた90曲近い現代音楽作品は、無味乾燥でアカデミックな戦後のアメリカ音楽の特徴である音列主義スタイルであるとして、現在全て破棄されている。
この留学期間中にグラスはあるヒッピー的東洋への憧れを謳歌した映画の制作に携わり西欧近代音楽とはまったく異なったシステムの音楽と出会うことになる。



グラスいわく
「アレン・ギンズバーグやピーター・オーロフスキー、ウィリアム・バロウズといったニューヨークの文学アンダーグラウンドから来た連中を巻き込んだ初期のサイケディリック・ファンタジー」だったというコンラッド・ブルックスの『チャパカ/CHAPPAQUA』という映画のサウンド・トラック製作に参加することになり、この仕事を通してシタール奏者ラヴィ・シャンカールを知ることとなる。シャンカールのスコアをいったん西洋式記譜に起こし直す仕事であった。(当初この映画の音楽を担当していたのはフリー・ジャズの旗手オーネット・コールマンだったが、出来上がった音楽があまりにも過激だったために、彼の「チャパクア組曲」は幻のサントラとして発売されることになった。)

・・・まさに、フィリップ・グラスとインド音楽との幸運なる出会いであった。



「シタール奏者:ラヴィ・シャンカール/ Ravi Shankar」
熱狂的な即興演奏と深い精神性で、ジャズやロックにも影響を与える インドのシタール奏者、ラビ・シャンカールは、シタールと打楽器・タブラのスリリングなかけあいによる即興演奏で人気を得ました。インド国営放送の音楽ディレクターも務め、映画音楽作曲などインド古典音楽の枠にとらわれない活動も展開。1952年にはインドを訪れた名バイオリニストのメニューインと親交を結び、64年にはジャズ・サックス奏者のコルトレーンにインド哲学を教えるなど、世界の一流アーティストの間で知られる存在になりました。 ラビ・シャンカールの名前がロック・ファンの間にも浸透したのは、66年のビートルズのジョージ・ハリスンとの出会いがきっかけです。67年のモンタレーや、69年のウッドストックといったロック・フェスティバルにも出演。71年にはジョージに呼びかけてバングラデシュ難民救済コンサートを実現したり、と精神的にも指導的立場を演じました。

インドでは言うまでもなく西洋音楽にインド~東洋の古典音楽を結びつけた最も偉大なる音楽家として君臨している。Norah Jonesは実娘。



インドの伝統的な音楽は、西欧音楽より遥かに古い歴史を持っています。基本的に和声という概念は無いようで、音階が重要になります。それらの音階は朝に演奏するための音階、昼に演奏するもの、夜に・・・というように時間によって決められており、楽曲はその音階の音のみで構成されて西欧音楽のように転調とか他の音階に途中から変わることはありません。



インドの伝統音楽との出会いは、グラスのキャリアのターニング・ポイントになった。グラスは現在でも、シャンカールと彼のグループのタブラ奏者アラ・ラーカが、彼の創作に根本的な影響を及ぼしていると語っている。シャンカールは、インド音楽に関心を持ったグラスをこのように回想する。 「彼(グラス)に出会った瞬間に、彼がとても興味を持っていることがわかった。彼は、ラーガとターラ(インド音楽で打楽器が受け持つ強弱のリズム型、拍子)について私に質問をはじめ、すべてのスコアを書いていった。一週間、とにかくたくさんの質問をしてきた。彼が本当に興味を持っているのがよくわかったので、短い間だったが彼に教えられることはみんな話した」。
グラスが魅了されたのは、シタールの神秘的な響きではなく、インド音楽の複雑な構造、特に北インドの音楽の反復されるリズム・パターンだった。そのパターンが、グラスにとって未知の時間の流れを作り上げていた。起承転結ともいうべきドラマティックな構造を持つ典型的な西洋音楽とは違って、インド音楽は、表面的に発展し、 どこかに進んでいくというようなことがなく、同じエネルギーのレベルをずっと維持しつづけるのだ。

  

インド音楽に触発されたグラスは、それから66年にインドに行って、先述のタブラ奏者アラ・ラーカについてインド音楽のリズムを学び、また、モロッコやアフリカなどにも赴き、非西欧諸国の音楽を研究する。そして、1967年にニューヨークに戻ってきたとき、彼の頭のなかにはミニマリズムの構想がしっかりと固まっていた。

(「パッセージズ」ライナーノーツ~より)



サミュエル・ベケット(Becket, Samuel不条理演劇の巨匠。
グラスのもう一つの大きな出会いとして、舞台との接触があげられる。64年、パリでサミュエル・ベケットの『芝居』が上演される。



サミュエル・ベケット『芝居』

ここでグラスは最初の妻となるジョアンヌ・アカライティスと出会う。以後、この劇団「マブー・マインズ」の非公式な座付き作曲家として舞台の為の音楽を書き続けることになる。ベケットの舞台に影響されたグラスは『伴侶』(元は小説。「想像力は死んだ、想像せよ」の一節で有名)などのベケットの舞台作品にも音楽をつけた。



以降、実験演劇界の巨人ロバート・ウィルソンとの作品、《浜辺のアインシュタイン》('76)は世界的な評価を獲得し、オペラの芸術形態の既成概念を変革させました。このグラスのミニマリスムがフィットしたオペラについてグラスは「意味」がひとつに集約されない作品、つまり、シェークスピアでは同じ芝居を何度観ても感情の山場が同じだが、ベケットの「喜劇」を観ると、毎回違っている。



「啓示の鍵は劇に没頭するかどうかでなく、離れることだ。現代劇はこうした感情分離を必要とする。」



オペラ「浜辺のアインシュタイン/Einstein on the beach」(1976)
ロバート・ウィルソンとのこの仕事以後、グラスはパフォーマンス・アートとの関わりが一層深くなってゆく。それらの多くが興行的に成功しているため、「もっとも成功したミニマリスト」などと言われることもあります。



ーグラスは自分にとってミニマリスムは1974年に終わったのだと語っている。
ミニマルが実験音楽として純粋にミニマルだった時期は意外に短く、ポスト・ミニマルの作曲家たちによって、さらなるグローバル化が進められ、プログレッシヴ・ロックや映画やドラマのBGMなど広範囲に渡っています。一部のマニアのための存在から脱することができないシェーンベルク以来の無調音楽に対し、ミニマルは、その耳心地のよい和声や、わかりやすい主旨などから、多くのファンを獲得いた音楽ですね。



CD「Mishima: A Life In Four Chapters (1985 Film) /Philip Glass」オリジナル・サウンドトラック
ミニマル・ミュージックの代表的作曲家として人気を確立し、映画音楽にも積極的に関わっているフィリップ・グラスの傑作。



ポール・シュレイダー監督作品/Paul Schrader's films
DVD「Mishima: A Life in Four Chapters(1985)」

三島由紀夫が陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決を図った運命の日の行動を追いながら、「金閣寺」、「鏡子の家」、「奔馬」の三つの小説を織り込み、さらにそれらの小説とオーバーラップさせながら三島自身の人生を描く手法で、三島由紀夫の世界を独自の視点で映像化している。幼年期から自決までの細かいエピソードについては、記録に残された三島自身の言葉や行動以外は一切使わず、事実に忠実に客観的に描かれ、映画全般を通底する文学的なトーンを醸し出すことに成功している。またハリウッド映画で描かれるヘンな日本人像とは違い日本人の目から観ても全く違和感がない日本人像で描かれている。緒形 拳は、ボディビルで鍛えた三島を演ずるために、撮影前に9cmも胸囲を増やし、腹筋が別れて見えるほど体型を変えたというから、ロバート・デ・ニーロも顔負け。85年のカンヌ映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞。この作品は三島夫人や中曽根元首相など、各方面からの圧力があって完成から20年近く経った今なお日本では公開されていない。

製作総指揮/フランシス・コッポラ、ジョージ・ルーカス
監督・脚本/ポール・シュレイダー
音楽/フィリップ・グラス、クロノスカルテット
プロダクションデザイナー/石岡瑛子
出演/緒形拳、 坂東八十助、沢田研二、佐藤浩市、萬田久子、烏丸せつ子、大谷直子、加藤治子、永島敏行、三上博史、他



現代音楽ファン垂涎の奇跡的映像!ピーター・グリーナウェイ監督
『4 American Composers』
フィリップ・グラス、ジョン・ケージ、ロバート・アシュリー、メレディス・モンク。
このピーター・グリーナウェイ監督の傑作ドキュメンタリー『4 American Composers: Philip Glass』でグラスは<浜辺のアインシュタイン>から抜粋した<Train/Spaceship>をPhilip Glass Ensembleと伴に演奏しております。現代音楽ファン垂涎のこのシーンをぜひともご覧いただきたいです。他にピーター・グリーナウェイ監督とは、グラスの委嘱により短編『The Man in the Bath』でコラボしています。
「コックと泥棒、その妻と愛人」、「ZOO」、「数に溺れて」、「プロスペローの本」など一種難解さを持ちながら特異な画像を作ってきたピーター・グリーナウェイが、「英国式庭園殺人事件」監督後の1983年にテレビ局“チャンネル4”のためにシリーズとして作った4人の現代の作曲家(パフォーマー)を取り上げた作品。画面の構成から、エピソードのカット、数字やアルファベットの使用法など、映画でみせた斬新な手法を用いて現代音楽家の芸術に迫る異色の映像ドキュメント。
<第1面:ジョン・ケージJohn Cage>
ケージ生誕70周年を記念して催された「ミュージック・サーカス」(40年の創作をチャンス・オペレーションで時には同時に、時には順次演奏)の模様を中心にケージのインタヴュー、言葉の並列などで構成。
<第2面:ロバート・アシュリーRobert Ashley>
語り(言語)にこだわり続け、マルチなメディアにも注目して製作された「Perfect Lives」(ヴィデオのためのオペラ)を中心に収録。
<第3面:フィリップ・グラスPhilip Glass>
ミニマルの作曲家として有名なグラス率いる「フィリップ・グラス・アンサンブル」のコンサートの演奏(タイミングを取る生き詰まるような合奏!)を中心に、合間にインタビューをはさみながら収録。(「浜辺のアインシュタイン」からのコンサート・ヴァージョン“Train/Spaceship”も聞かれます)
<第4面:メレディス・モンクMaredith Monk>
既成のジャンルを超えたパフォーマンス・アーティスト(ダンサー、振り付け、歌手、俳優、映画監督、作曲家)でもあるモンクの、古代儀式を思わせる「ドルメン・ミュージック」の演奏の模様や、最初の映像作品「16ミリのイヤリング」から始まって他の様々な映像作品、練習、他の演奏の模様など、独特の発声でテーマ性を廃して音節を追求することで音楽の在り方を問うてきた姿が浮き彫りに。
(解説:大森さわこ、柿沼敏江、藤枝守)


ekato


~百聞は一見に如かず~
「生きるために、各瞬間が発生し、その瞬間がいつも変化している。するべき最上のことは、耳をただちに開け、思考が音を何か論理的だったり、抽象的、象徴的な何ものかに変えてしまう前に、すぐに聴くことである。」
                            ー ジョン・ケージ



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